「糖尿病」という名前から、尿に糖が出る病気であると理解しておられる方が多いと思います。
しかし、実は尿に糖が多く出ることがこの病気の本質ではありません。
「血液中の糖を下げる力が低下し、その結果、血糖値が高い状態が続く」これが、糖尿病の本質です。
【血糖値が下がる仕組み】
インシュリンが不足していると糖がエネルギーに変換されず、慢性的に血液が高血糖になってしまいます。
さらに、運動不足などによってエネルギー消費が低下しているにもかかわらず、糖質の多い食事をしていると過分な糖が血液中に残ってしまい、血糖値が上昇し、糖尿病になってしまいます。
糖尿病は「サイレントキラー」と呼ばれるほど、初期段階では症状がなく、見過ごしてしまいがちです。
しかし、心筋梗塞のような心臓疾患や、脳梗塞、脳卒中といった脳疾患を引き起こすこともありますので気をつけましょう。
もし次のような症状があったら、すでに糖尿病が進行しているかもしれません。
該当するものがひとつでもあれば検査を受けましょう。
□ 最近太ってきた | □ 食べているのに痩せる | □ 食欲が抑えられない |
□ 急に甘いものが食べたくなる | □ 喉が渇きやすい | □ 手足がしびれる |
□ 足のむくみが気になる | □ めまい、立ちくらみがする | □ 下腹部がかゆい |
□ 頻尿である | □ 尿の量が増えた | □ 残尿感がある |
□ 尿がにおう(甘いにおい) | □ 肌の乾燥、かゆみが気になる | □ 目がかすむ |
□ だるい、疲れやすい | □ 怪我ややけどの痛みを感じにくい |
特に肥満ぎみの方、つい食べ過ぎてしまう方、脂っこいものや甘いものが好きな方、運動不足の方など、生活習慣に問題がある方は糖尿病になりやすいのでご注意ください。家族に糖尿病の方がいる場合もリスクが高いと言われています。定期的に検査を受けましょう。
糖尿病は大きく2種類に分けることができます。
1型糖尿病
ウイルス感染や自己免疫反応の異常によって、インシュリンを作り出せない、またはわずかしか作りだせないことで起こる糖尿病です。10~20代で突然発病する場合が多いのが特徴です。
2型糖尿病
インシュリンを作り出す量が少ない、働きが悪いことで起こる糖尿病です。飲酒や喫煙、運動不足などの生活習慣や加齢、遺伝などが危険因子となって起こります。日本の糖尿病患者の多くは、この2型です。
高血糖の状態が続くと徐々に全身の血管が侵され、主に細い血管が障害されて起こる三大合併症に苦しむことになります。
1.糖尿病神経障害
手足がしびれる、ピリピリするといった手足の神経の異常、胃腸の不具合、立ちくらみといった自律神経の異常が見られます。
2.糖尿病網膜症
網膜の血の流れが悪くなることで、最悪の場合、失明してしまいます。
3.糖尿病腎症
尿をつくるなどの腎臓機能が使えなくなり、人工透析をする必要がでてきます。
糖尿病は自覚症状が出にくい病気です。健康診断などで血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)、尿糖の数値が異常であると指摘されてはじめて気付くという方がほとんどです。定期的に血糖値の測定を行いましょう。
「普段の血糖値」「朝何も食べていない時の血糖値」「ブドウ糖液を飲んだ後の血糖値」のどれかに異常が出たら、後日再検査を行い、再度、異常が出たら「糖尿病」と診断されます。
糖尿病は、症状がないために治療する必要性を感じず、放置してしまいがちです。
しかし、その間にどんどん血糖値は高くなり、気付かないうちに全身で合併症が起こり始めることもあります。
医師の指導のもと、次の治療法を行っていきましょう。
1.食事療法
医師の指示に従って、バランスのよい食生活を送ります。どの食べ物が良い・悪いというより、エネルギー量が過剰にならないよう、規則正しい食生活を継続していくことが重要です。糖尿病の最も効果的な治療法と言えます。
2.運動療法
身体を動かすことは、体内のインシュリンの反応を良くしてくれます。ハードなものより、簡単で安全にできるウォーキングなどがお勧めです。食事療法と共に、基本的で大事な治療法です。
3.薬物療法
1型糖尿病ではインシュリン注射を行います。2型糖尿病では、運動療法や食事療法によって病状が好転しなければ、インシュリン注射や経口血糖投下薬の服用を行います。